恵はどうしても和菓子職人になりたかった。

幼いころよりあんこが大好きだったし、綺麗な形に整えられたお菓子を頬張るのがたまらなく楽しかったからだ。

中学生になれば食するばかりでなく、自分の手でこねたり蒸したりした和菓子が、人に望まれて美味しいと言ってもらえたら、それだけで満たされた気がした。

高校生になるころには、将来について一々考えるより前に、自分は和菓子職人になると疑いもなく信じていた。

和菓子職人である恵の父親が、古くからある商店街で和菓子屋を営んでいたのも大きく影響しているのだろう。小さなころの彼女は、小学校から帰ればランドセルを放って厨房にとんでゆくのが常だった。