消えないで、媚薬。
【消せない独占欲】




「たーかの♪」




「え?時田…くん!?」




園児たちを無事見送った後ひょっこり現れた時田くん。
同窓会の時と違ってスーツだし髪型もきちんとセットしてある。
全然見違えるよ…!




保護者たちは帰った後で助かった。
急にフラッと来ちゃうんだもん、心の準備が…!




「ちょうど取引先この近くでさ、もしかしたら会えたりすんのかな〜?なんて立ち寄っちゃったんだけど迷惑だった?」




「いや、ううん…!あ、でも今みたいな時間帯だと助かる。保護者の目もあるしね」




「そっか、アポ取るにも勤務中は携帯見ないだろうな〜と思って黙って来たけど、良い先生っぷりじゃん」




「えっ!?見てたの?いつから?」




「え?園庭で子ども達と遊んでた時くらいから…?」




めちゃくちゃ保護者居たじゃん!!
良かった、時田くんが常識人で。




「そうなんだ……」




「俺、今日仕事早く終わるんだ。一緒に飯でもどう?」




「え?今日?」




「何か予定あった?」




「いや、ないけど……」




この前のことはなかったフリですか…?
酔ってたしなぁ……




「この前のお詫び、させてよ」




お、覚えてる…!
真っすぐ私の目を見て顔色ひとつ変えないで言っちゃうんだ……
私だけが真っ赤になって……?
私だけが意識してるとか……?




「安心して?もうあんなことしないしお酒も飲まないから。本当、一緒にご飯食べてくれるだけでいいから……」




チラホラと他の先生の視線を感じながら慌てて「分かった、5時半終わりだから終わったらメールする」って答えてた。
安心したような笑顔で「待ってる」と去って行く。




案の定、先輩保育士さんに突っ込まれながら事務仕事。
なかなか進まんぞ……コレは。







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