「うぅっ……」

 冷静になると、わたしはとんでもないことをやってしまった……。

 だって、大河以外のひとと——それも、先生と恋愛感情のないキスをしてしまったのだから。


「わー‼︎ なんで?」


 理屈としては浮気じゃないのに、大河を裏切った気分に陥ってしまい、トイレの床に座り込む。

 いくら錯乱(さくらん)してたとはいえ……先生とキス、はまずいよね⁇

 そもそも先生は、なんでわたしにキスをしたの?

 ただの慰め?

 分からない……。


 でも、弥永先生とのキスは暖かくて心地よかった……。

 それは、大河が居なかったら、好きになりそうな勢い。


——大河が居なかったら?



 わたし……なに最低なこと、考えてるの?


 わたしには大河しか居ないのに……。



——『うさ、お前ウザい』



 昨日、大河に言われたセリフが虚しくこだました。


「たい、が……」


✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

 教室に戻ると、クラスメイトたちが騒がしかった。

 そりゃそうか……。

 大河がわたし以外の女子と居るの初めてのことだもんね。

 だけど、みんなの噂の的は違った。


「うさ‼︎」

「成葉?」


 成葉は今までに見せたことのないくらい血相を変えていて、わたしはすっとん狂な声をあげることしか出来なかった。


「どうしたの?」

「なに呑気なこと言ってるの‼︎」


 「それよりこれ!」と言って取り出された成葉のスマホの画面には、さっきの弥永先生とのキス写メが表示されていた。

「なん——」

「今、弥永先生、聞き取り調査されてるって!」


 なに⁇

 なんでこんな写メが……。

 大河……。これ、誤解したよね?


 大河の方を見たいけど、見られない……。


「遊佐!」


 すると、担任から呼ばれて、わたしも校長室へと行くことになった。