【母子恋愛】かあさんの唄
第3話
次の日の深夜3時頃のことであった…

アタシとゆうとさんは、香西北町の新興道路沿いにあるラブホを出たあと歩いてJR高松駅へ行きました。

到着した時、時計のはりは朝5時に5分前になっていました。

ゆうとさんは、アタシの帰りの特急列車のチケットを買って、アタシに差し出した。

「これ、帰りの特急のチケットです。」
「ありがとう。」
「けいこさん。」
「なあに?」
「また、けいこさんに会いたいです。ぼく…けいこさんのことが好きになりました。」

ゆうとさんは、アタシに今の気持ちを伝えました。

アタシは、ゆうとさんにアタシのメアドを書いたメモを手渡した。

「これ、アタシのメアドよ…会いたくなったら、いつでもメールをしてね。」
「けいこさん。」
「松山に来たら、いつでも会えるから…」

アタシは、ゆうとさんに『アタシに会いたくなったらいつでも松山に来てね。』と言った後、始発の特急いしづち101号に乗り込んだ。

アタシは、帰りの列車の中で、昨夜ラブホのベッドの上でゆうとさんに抱かれていた時のことを思っていた…

ゆうとさんは、シャワーを浴びに行こうとしたアタシの腕をつかんで、強引にベッドへひっぱっていった…

ゆうとさんは、アタシを無理やりベッドに寝かせて、激しいキスをした…

その後、無理やり上着とジーンズを脱がして恥ずかしい姿にされた…

ボディシェイパー姿のアタシに抱きついて、ゆうとさんは小さな子供のようにアタシのふくよかな乳房(むね)で『かあさん…』と言いながら甘えていた…

アタシは、そんなゆうとさんがいとおしくなったので、母親のように『よしよし…よしよし』と言いながらやらしい声をあげていた…

アタシはこの時、ゆうとさんの面影が16の時に出産した赤ちゃんの泣き叫んでいる時の姿を想い出した…

アタシが出産した男の子の赤ちゃんにつけた命名は『ゆうと』…

もしかしたら…

ゆうとさんは…

アタシが16の時に別れたあの子?

アタシは、心の中でゆうとさんへの想いを強めていたのと同時に、赤ちゃんと引き裂かれてしまった悲しい過去に苦しめられていた…

好き…

ゆうとさんのこと…

大好き…

だけど…

ゆうとさんがアタシの息子だと知ってしまったら…

どうしよう…

アタシが特急列車に乗って松山へ向かっていた頃、ゆうとさんは高松市円座町の家に朝帰りをしていました。

ゆうとさんの家の朝の食卓にて…

ゆうとさんは、両親と兄夫婦の家族(夫婦と5歳の長女)とシングルのお姉さんと一緒に暮らしていた。

7人家族が食事をしているダイニングのテーブルには、白ごはんと白みそのお汁(おつい)とアジの開きときんぴらごぼうとたくあん漬けが並んでいた…

「ごちそうさまでした。」

先に食事を終えたのは、兄夫婦であった…

ゆうとさんのお兄さまはガソリンスタンドの店長さんで、兄嫁さんはマルヨシセンター(スーパーストア)でパートさんの共稼ぎ夫婦であります。

兄夫婦は、長女を保育園に送った後それぞれの職場に出勤していた…

兄夫婦の家族が出発後、食卓にはゆうとさんと両親とシングルのお姉さんが残っていた…

ゆうとさんの父親は、シングルのお姉さんにあつかましい声でこう言うていた…

「亜寿紗(あずさ)!!この前のお見合いのことだが、いつになったら先方さんに返事をするのだ!!」
「またその話しぃ?…もうカンベンしてよぅ。」
「コラ!!親に対してなんてことを言うのだ!!」
「悪かったわね!!」
「亜寿紗!!いつになったら先方さんに返事をするのだ!?あと3日、もう3日とくり返して言い続けておいて、先方さんに返事することを先送りしてばかりいるじゃないか!?」
「そんなことは知らないわよ!!」

たまりかねたお母さまは、シングルのお姉さんに困った声で言いました。

「亜寿紗!!お父さんに口答えをしないで!!お父さんは亜寿紗が幸せになれるようにと思っていろんな人にお願いをして、お前のお見合いをセッティングしていたのよ!!亜寿紗にはお父さんの気持ちが分からないの!?」
「だから、結婚って、誰のためにする結婚なのかしら!?」
「誰のためって、亜寿紗が幸せになるための結婚じゃないのよ!?」
「アタシが幸せになるためって…フン、そんなのウソよ!!」
「どうして否定するのよ!?」
「否定するわよ!!それなら言うけど、先方さんにイヤだからおことわりと言うておいて!!」

お姉さんの言葉に対して、おかあさまはつらそうな声でこう言うた。

「イヤだからおことわりって…どういうところがイヤだと言うのよ!?先方さん方の家の人はまじめなサラリーマンの人よ!!小さなことからコツコツコツコツと積み上げてがんばってきた人なのよ!!ガマンしてガマンしてガマンしてがんばってきた人で、これから幸せになろうとしている人なのよ!!」
「フン、バカみたいだわ…ガマンしてガマンしてガマンして…と言うけど、何に対してガマンして来たのかしら…先方さんが銀行員で高収入と言うからお見合いをしたのよ…本店勤務で企画のお仕事をしていると思っていたら…ドイナカのちいちゃい支店でさつたば数えで収入は月給7万円だけ…だからイヤだと言うたのよ!!」
「先方さんは契約社員だからお給料が少ないのであって、正社員になれるように一生懸命になってがんばっているのよ!!どうして理解しようとしないのかしら!?」
「バカみたいだわ…先方さんは稼ぎが悪いグータラだから、一生お嫁さんなんかもらえないのよ!!それと、先方さんの両親が同居を希望していることもことわる理由に入っているから…結婚しても、親きょうだいと同居する結婚なんて死んでもイヤだから、断っといて!!」
「断っといてって…それじゃあ、お前のためにこまごまと動いていたおとーさんの気持ちはどーでもいいと言うわけなの!?」
「知らないわよ!!アタシ、結婚以外に生き方がみつかったから…バカバカしい…結婚だけが幸せだなんて誰が決めたのかしら!!女ひとりでも、その気になればなーんでもできるわよ!!先方さんにこう言うておことわりしてよね!!『お嫁さんほしいのだったら、お嫁さんを養える経済力をつけてからにしなさい…君みたいな安月給は無理だから、もう少しがんばって努力しなさい…』って言うておいて!!」
「亜寿紗!!」

ゆうとさんは、両親とシングルのお姉さんが口論になっていたのを聞いたので、ブチ切れてしまった…

ゆうとさんは、イスから立ち上がったあと、平手打ちでバーンとテーブルをたたいて、食卓から立ち去りました。

家を出たゆうとさんは、国道32号線の成合大橋の付近にあるマクドへバイトに行きました。

ゆうとさんは、外でバイトをすることが中心の生活であったので、家族と一緒に過ごす時間なんてありませんでした。

ゆうとさんは、朝の9時から明け方の4時までバイトをしていました。

バイトはマクドの他にも、居酒屋さんのチュウボウで皿洗いやガソリンスタンドで洗車など、4~5のバイトを掛け持ちしていました。

ゆうとさんは、そう言った生活をしていたので両親たちと一緒に家族だんらんで過ごす時間は全くなかった…

シングルのお姉さんの結婚の問題で両親とシングルのお姉さんが怒鳴り合うことがばかりが続くから、家にいるのがイヤだ…

そんな中で、家族が仲良く暮らして行くなんてどだい無理だよ…

ゆうとさんは、心の中でこう思っていました。

その夜、ゆうとさんは市内菊池寛通り(きくちかんどおり)にある居酒屋さんのチュウボウで皿洗いをしていました。

ゆうとさんがぼんやりとしていたので、チーフから『おい!!食器がドンドン運ばれてくるのにぼんやりとするな!!しっかりとすみずみまで洗え!!』とどやされていました。

ゆうとさんは、アタシと出会ったあの日からぼんやり気味になっていた…

けれど、どうにか気持ちを集中して皿洗いを続けていた…

ゆうとさんが居酒屋さんのチュウボウで皿洗いをしていた頃、アタシは松山市内にあるデリヘル店で働いていた…

アタシがデリヘル店で働くようになったのは、ダンナの出向が決まった直後であった…

ダンナのお給料が9万円に減少したので、専業主婦を続けて行くことができない…

ダンナのお給料が減少した分をおぎなうためにデリヘル店に入店して、働いていた…

アタシがデリヘル店へ行く時間は、ほとんどはダンナが勤務中の時間帯が中心であったけど、ダンナが家を空けている時は一日中デリヘル店に行っていました。

時には、三番町にあるファッションクラブでも働いていたので、ふたつの店を掛け持ちしておカネを稼いでいた…

この日の夜、アタシは松山市平田町にある旧道沿いのラブホで予約のお客様の相手をしていました。

アタシが在籍をしている松山市内にあるデリヘル店は、老舗のデリヘル店のグループのイメージデリヘル店なので、基本的にはイメプレがメインであります。

アタシは、ビキニの水着姿でお客様の相手をしていました。

お客様は、ビキニ姿のアタシにだきついて、小さな子供のように甘えていました。

お客様は、迷子になったあと母親と再会した幼子をイメージして、アタシに甘えていました。

「かあさん…わーん、わーん。」
「よしよし…かあさんに会いたかったのね…よしよし…」

それから20分後、お客様と約100分間の時間を過ごしたアタシは、ひとりで浴室にいてシャワーを浴びていました。

この時アタシは、高松市香西北町のラブホでゆうとさんと過ごした時のことを思い出していました。

今日のお客様も、ゆうとさんと同じく幼子のようにアタシのふくよかな乳房(むね)に甘えていた…

やだ…

アタシったら…

ゆうとさんのことを思い出してしまったみたい…

よく分からないけれど…
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