死者の時間〜最期のメッセージ〜
ブリー
翌日、街は鉛色の雲で覆われていた。

藍は起きてすぐにテレビをつける。天気予報では、徐々に接近している台風のことが報じられていた。かなり大きなもののようで、藍は折り畳み傘を持っていくことにする。

生ハムとレタスのサンドイッチにトマトカレースープという軽めの朝ご飯を食べ、藍は支度をしてすぐに家を出る。今日は研究所には行かず隣の県へ行くのだ。

「如月刑事、原刑事、おはようございます」

電車に揺られ、藍は病院の前ですでに待っていた二人に頭を下げる。

「おはようございます」

原刑事はニコリと笑い、如月刑事も微笑んで挨拶を返す。

「早速、解剖を始めます」

「わかった」

如月刑事が答える。藍は解剖の準備をし、台の上に桑原陸人の遺体を置いた。

「午前八時五十分、解剖を始めます」

メスを手に、藍は桑原陸人の首に触れる。髄液を調べるためだ。髄液を取り出し、続いて脳を調べる。

解剖を進める藍を、如月刑事は頰を赤く染めて見つめていた。原刑事がニヤリと笑う。
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