Sync.〜会社の同期に愛されすぎています〜
Side 1ーOne way loveー

プロローグ

まるでホテルのような上質なシーツが肌に触れて気持ちがいい。
遮光カーテンから差し込む朝の光が心地よい目覚めを促す。
軽快なスマホのアラームで起こされない朝はどうしてこんなに幸せなのだろう。

コーヒーのいい香りとパンの焼ける香ばしい香りにフライパンでウインナーを炒める音が一気に食欲を促す。

(パンの匂い?そんなの今まで自分の部屋で嗅いだことない!)

産まれてこのかた実家暮らし。私の部屋は二階でキッチンからは遠いはず。
このいつもと全く違う状況に違和感を覚え飛び起きてあたりを見渡すと、どうみても自分の部屋ではない。
シーツの質感が違うし、ベッドと最低限の家具が置かれていてそのどれもがセンスのいいモデルルームのよう。
住宅メーカーに勤める私は、「おしゃれな家」をたくさんみてきたわけでその辺の感覚は人並み以上にある。
ここはまさに「THEおしゃれな男の一人暮らしの部屋」

私は、慌てて自分の体を確認するが男物のブカブカのTシャツを着ており甘すぎない爽やかな洗剤のいい香りがする。
Tシャツの下にはブラジャーをしっかり装着していてパンツは履いている。
私はこの清潔感ありのおしゃれで綺麗好きそうな男の部屋で昨夜何をしたと言うのだろう。

生まれて28年。笑えるけれど処女。 

こんな記憶のないままに卒業してしまったならば自分が情けない。
かすかな記憶を手繰り寄せても、残ったお酒のせいで頭痛がする。

「処女を卒業するとあそこから血が出るらしいよ」とか
「次の日あそこが痛いんだって」という子供の頃友達が言っていた根も葉もない噂をふと思い出しパンツの中を覗こうとするが、その瞬間を相手の男に見られてしまったら女として終了な気がするので、私はとにかくどんな相手なのかを把握することにする。
一度呼吸を整えて、鏡で寝起きでぐしゃぐしゃの髪を整えた。

(化粧もそのまま。お風呂にも入らず髪もボサボサ)

私は、そのいい匂いがするキッチンへ向かうと私に気がついた男が「おはよう」と爽やかな笑みで笑う。
その顔を見て、私は気を失いそうになる。

「うそでしょ???」

私は、顔を隠しながら大きな声でそう言った。
現実を受け止めるには時間がかかる。

(どうして、どうなって、こうなった?)

私にとっては「ありえない」相手がそこにいたのだから。
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