Bloody wolf

闇と光

千里と二人で心配した通り、次の日も及川君はめげずに話しかけてきた。

休み時間に自然な笑みを浮かべて。


「篠宮さん、テスト出来た?」

なに? 振られたのにその爽やかな笑顔は。

「別に」

机に頬杖をついて窓を見つめたまま返す。

机の前に立ってる及川君と、誰か連れ去って欲しい。


不満げに見てくる暇があるなら、連れに来い!

こちらを睨みつけてくる女子達を窓ガラスに見つめながら、切実に願う。

もちろん、その願いは届く様相を見せない。


「僕、ちょっと、ヤバい課目あるんだよね」

「・・・・」

知らないわよ。

人の机に手をつくの止めてよ。


私達のやり取りを気にするようにクラスメートがチラチラと見てるのが分かる。

マジで有り得ない。


「あ~早くクラブ始まらないかな。あ、僕、サッカー部のなんだよ」

「・・・そう」

「勉強より、体動かしたい」

どうでもいいことを、話してくる及川君をなんとかして。


「及川君、悪いけど、私、響と話あるんだけど」

千里が助けに来てくれた。

ホッとすると同時に、ありがたい気持ちになった。


「そうなんだ。じゃあ、またね、篠宮さん」

気にするでもなく、私にヒラヒラと手を振って去っていった及川君。


「取りつかれちゃってるわね」

呆れ顔で去っていった及川君に視線を向けた千里。

「ほんと、いい迷惑」

顔を歪めて溜め息を漏らした。


「及川君、かなり心臓が強い人よね」

「鋼で出来てるんじゃないの?」

あんなに冷たくされても、笑って接してくるなんて。


「フフフ、それは言えてる」

「他人事だと思って笑ってないでよ」

「ごめんごめん、そんなつもりは無いけど」

「誰か、あれを止めてよ」

友達と楽しそうに会話をしてる及川君を見た。

及川君を小突いたりして、笑ってる同級生に私なんて止めろと言ってもらいたい。


「及川君が飽きるまで無理じゃないかしらね」

「あ~もう、勘弁してよ」

机に突っ伏して両手をだらりと前に放り出す。


「よしよし、出来るだけ助けるようにするから頑張って」

千里が私の頭をポンポンと叩いた所で、次のチャイムが鳴った。
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