いつか、きっと。
プロローグ
車の助手席から窓の外を眺める。

梅雨に入ってから、待ってましたとばかりに降り続く雨。

「長崎は今日も雨……か」

「梅雨やけん全国的に雨やろ?福岡も近かけん、あんま変わらんとじゃ?」

独り言のつもりで呟いた私の言葉に、返って来た彼からの言葉はごく当たり前のことで、返事をする気にもなれなかった。

「雨のせいか結構道の混んどる。JRの時間までどんくらい?間に合うやろうけど。駐車場空いとればよかけどな」

やっぱり、駅まで送ってくれるだけじゃなくてホームまで着いて来るつもりなんだ。

「構内で降ろしてくれればよかよ。そっからは1人で行くけん」

「なんば言いよっと。明日美のことやけん間違えて"かもめ"に乗るかもしれんし」

な、なんで?

一瞬動揺してビクついてしまったけど、ただの冗談だと気付いてホッとした。

「もう!友也はいつまでも私ば子ども扱いするとやけん。もう立派な大人だから間違えたりしませんよーだ」

こうやって軽口を叩きあうのも、これで最後なんだろうな……。

そう思うとまた胸がしくしくと痛みだした。

「ねえ、ちょっとコンビニに寄ってくれんかな」

「駅に行くとに、アミュじゃだめと?」

そうよね、駅には"アミュプラザ"という駅ビルがあるし、kioskだってあるんだもん。

コンビニに行く必要性は無いに等しい。

「ごめんけど、"イレブン"限定のお菓子ば買いたか。駅の向かい側の"イレブン"でよかけん寄ってよ」

「へいへい。寄ればいいとやろ?"シーサイドライナー"に間に合わんでも知らんけんな」

文句を言いながらもちゃんと私のいう事を聞いてくれる。

思えば彼はいつでも優しかった。

駅に近いコンビニは駐車場が狭く、満車で停められそうにない。

路駐するにしても道路が狭く邪魔になるため店から少し離れた場所にしか空いたスペースがなかった。

「ちょっと遠かけどココしか停められん。けっこう雨降りよるけん傘ささんばやろ?」

よかった、これで違和感なく傘を持ち出せる。

店のすぐそばだったら濡れる心配がないため、傘は要らなかっただろう。

「じゃ、ちょっと行ってくるね。待っとって」

傘をさして"イレブン"の入口へと向かう。

車から店の入口は見えない位置にあるのが幸いだった。

振り返ろうか?

いや、だめだよ。

もう振り返る事はできない。

雨はしとしとと静かに降り続いている。

まるで私の心を表しているかのように。

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