課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
降りて~ ~羽村~


「いいえ、結構です。
 羽村さんに川を渡っていただくとか」

 ……なんの夢を見てるんだ、と羽村は背中で、雪乃が、もにょもにょ言うのを聞きながら、思っていた。

 『背中に背負う』から、背負って、川を渡るまで飛んだのだろうか?

 発想がわからん、と思いながら、羽村は、自宅のマンションのドアを開けた。

「はい、降りてー。
 起きてー。

 住所言ってー。
 タクシー呼ぶからー」

 道路で土下座したまま寝てしまった雪乃を背負い、結局、自宅に帰ってしまっていた。

 置いて帰るわけにもいかなかったからだ。
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