夜が明けるとき ~続・魔法の鍵と隻眼の姫

暗雲



セイラスとリノンの結婚祝賀会は滞りなくとり行われ数週間が過ぎた。
なにかと忙しいセイラスとリノンだったのでゆっくり話をすることが出来なかった。
結婚ムードから落ち着いてきた今日、ミレイアとリノンは二人きりで念願の義理姉妹の御茶会が催された。

「まあ!私たちがパレードに行っている間にプロポーズされたの?」

頬がピンクに染まって可愛らしくにこりと笑うミレイアにリノンも嬉しくなる。
ミレイアから聞いた壮大な冒険と永い眠りの後に目覚めさせてくれたラミンとの愛。そしてプロポーズされたことにリノンは感動で胸を震わす。

ミレイアはあの日の事を思い出していた。

・・・・・

「本当はこんな所でプロポーズするはずじゃなかったんだ」

塔の中の一室、綺麗に設えてあるもののここは兵の見張りが立つ詰所。本来ミレイアが訪れるような場所ではない。

「もっと場所も考えてロマンチックに口説くはずだったんだがな。エルストンが余計なこと言ってお前を不安にさせるから…」

長椅子に二人で座りミレイアの肩を抱いたラミンは苦笑いを浮かべる。

「どんな場所でもいいの。ラミンの気持ちが嬉しかったから。私はとても幸せ」

見つめ合い微笑み合えばノニが恥ずかしくなってどこかに消えてしまうほど何度もキスをして幸せな余韻に浸った。

・・・・・


全てを包み隠さず打ち明けたミレイアはこの上なく幸せそうな顔をしていた。
しかし、ふとその笑みに影が差す。

「だけど…お父様が…」

ラミンが大事な話をしたいから時間を作って欲しいと国王に打診しても忙しいだの気分が乗らないだの理由を付けてはことごとくラミンの申し出を断っていた。
国王はラミンとミレイアの間に進展があったことを薄々気付いているようだ。

セイラスが片付いたばかりでトニアスはまだまだだと言うのに私のミレイアが…とぼやいているのをトニアスが聞いて、こっそりとラミンに教えたらしい。
そんな話をしてしゅんとするミレイアにリノンは励まそうと試みる。

「国王様は可愛いミレイアがラミン様に取られるのが寂しいだけですわ。ミレイア様と共に世界を救った救世主様なのだから、ラミン様ほどミレイアに相応しい方はいないわ、きっと国王様も分かってくれます」

「そうだといいんですけど…」

ことごとくミレイアとラミンの間を邪魔して、ミレイアがラミンの話をしようものなら無理やりにでも話を逸らし聞きたくないと態度であらわしてきてミレイアも困っていた。

力なく微笑むミレイアの手を取ったリノンはにこりと笑う。

「ラミン様の事を話すミレイアはとても幸せそうだわ。素敵な恋をしたのね。私はミレイアの見方よ、困ったことがあれば何でも相談してね?」

「ありがとう、リノンお姉さま」

ミレイアもリノンの手の上に空いてる手を乗せる。

「リノンお姉さまも、セイラスお兄さまのことよろしくお願いします。でも、もしお兄さまと喧嘩したら私はリノンお姉さまの見方しますね」

ふふっといたずらっ子のように微笑むミレイアにリノンも頬が綻ぶ。

「ふふ、ありがとう。強い見方が出来て嬉しいわ」

念願叶ったリノンはこの可愛らしい義理妹姫を守って上げたい庇護欲に駆られ、いつでもミレイアの見方でいようと心に誓った。

二人のお茶会は和やかに本当の姉妹のように仲良くいろんな話をした。
男性には聞かせられないことも明け透けに…。



どんなことを話したかは二人だけの秘密。

………
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