不機嫌な彼と恋のマジックドライビング

頑張って近づいてみました

***

あれから香田さんとは顔を合わせていない。

付箋を見てくれたのかもわからなかったし、もしかしたら車に貼り付けたことで怒らせたかもしれない。

今おもえば、タイヤ交換を手伝いにきたのも単なる気まぐれだったのかもしれないし、駐車場の話だって、片瀬さんが冗談で話した作り話かもしれない。

それくらい、私たちは挨拶どころかまるで避けているみたいに姿すら見ない。

それでも、やっぱり私は香田さんが好きなのだ。

一瞬で恋に落ちたあの笑顔を忘れることができない。

こんなに好きな人に出会えたなんて大袈裟かもしれないがそれは奇跡だって思っている。

兄にも誰にももう二度とこの恋だけは邪魔させない。

私から近づかないと駄目だ!


そんなふうに決意したところに週末の社内イベントで一階から手伝いの要請が入った。

私は…迷わず手をあげた。

「私がいきます!」と。
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