クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました
理性と苦悩 恵介side
            



 仕事の後、わざわざ俺の家に料理を作りに来てくれた彼女、遙を家まで送った俺は大きなため息をつく。

   

「あぶなかった……」

 信号待ちの車の中、ハンドルを握った手に額を押し付けそうつぶやいた。


 あの状況でなんとか理性を奮い立たせ、無事に遙を家に帰した自分をほめてほしい。

 小さな手できゅっと服のすそをにぎり、涙目でこちらを見上げた遙。

 緊張した面持ちで『泊まっていっちゃ、だめですか?』とたずねてきた彼女の可愛さに、思考力がゼロになるかと思った。

『キス、してほしいです』とおねだりした彼女の華奢な肩が緊張で小さく震えているのに気づいたときは、庇護欲が爆発してそのまま部屋に閉じ込めておこうかと思った。
          

 それでもギリギリで理性が勝ったのは、彼女の父と兄から『遙と本気で結婚したいなら誠意を見せろ』という強い圧力があったから。



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