ずるいひと
よくある幼なじみの設定。

隣の家、
窓が向かい合わせのお互いの部屋、
同い年の男女。

そして、恋をして…結婚の約束をする。


それは私の姉のお話であって、決して私の話ではない。



コンコンコンコン…

四回ノックが聞こえて、窓の鍵をわざとらしく音を立てて開ける。
そうすれば、窓は勝手に開くことを私は知っている。

ガラガラという音を立てて窓が開くと、彼が月明かりと共に入ってくる。
そして、部屋に踏み入れて、私の方を向くと嬉しそうな笑顔が戸惑いの色に変わる。


勝手に入ってきたくせに。

心が引き裂かれそうになるのを感じながら、私は無理に微笑む。

「ここ、私の部屋になったって言ったじゃん」

「あ、久しぶりに帰ってきたから忘れてた。
……亜貴(あき)は?」

「亜貴は今日……友達のところに泊まりに行ってるけど」

「最近、友達のところ行くの多いよね」と言いながら自分の部屋に戻ろうとする彼の腕をしっかりと強くつかんで引っ張る。

「せっかく来たんだからちょっと飲もうよ、お義兄さん」


〈お義兄さん〉。
そう、幼なじみはもうすぐ、義理の兄になる。

私の好きな人は、姉と結婚する。
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