擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
夢のひととき

 一章 夢のひととき



 タクシーから見える風景に、太陽に照らされてきらきらと光る海が入り込んだ。道沿いに建ち並ぶ民家が途切れて旅館や観光客向けの商店が増えてくる。

 ここまで来れば、目的地はもうすぐそこだ。

「あ、運転手さん、ここで下ろしてください」

 興奮気味な気持ちをおさえつつそう伝えると、運転手はちらりとルームミラーに視線を走らせた。

「え、ここですか? 宿の前まで着けますよ。まだ距離があるでしょう」

「いいんです。歩いて行きたいので」

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