いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
ドライブ日和
翌日のよく晴れた土曜日、約束通り10時に迎えに来た安藤部長と一緒に歩いて出掛けた。

休日に上司と一緒に出掛けるなんて初めてだから、妙な気分で落ち着かない。

私のアパートから歩いてすぐのところにある自動車メーカーのショールームへ行って、安藤部長がどの車にしようかと悩んでいる隣で、私はただぼんやりと車を眺めていた。

「真央はどれがいい?」

私は運転免許すら持っていないから、やっぱりどの車がいいのかなんてわからない。

見るところと言えば値段くらいなものだ。

「どれがと言われても……車のことはさっぱりわかりません」

「真央は運転はしないのか?」

「しないんじゃなくてできないんです、免許を持ってませんから」

「そうか。真央も運転しやすいように国産車のコンパクトカーを選ぶべきかと思ってたんだけど……俺しか運転しないならやっぱりセダンにするか」

何百万円もの高額な買い物をするのに、安藤部長はまるで電子レンジでも買うような口ぶりでそう言った。

やっぱり金銭感覚が私とはまったく違うようだ。

『国産車の』と言ったと言うことは、以前は外国産の車に乗っていたんだろうか。

エリートの安藤部長には似合いすぎるし、それはじゅうぶんあり得ると思う。

< 146 / 991 >

この作品をシェア

pagetop