いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
離婚の条件
翌朝はいつもの時間に起きてお弁当を作り、いつもの時間に家を出て電車に乗った。

ゆうべいろいろ考えたけれど、安藤部長が綺麗な女の人といたことに関して深く追究するのはやめておこうと思う。

キスをしていたと言うのは私の見間違いで、相手は取引先の人かも知れないし、偶然出会った友人とか身内と言う可能性だってある。

もしあの人と深い仲なのだとしても、誰と何をしようが安藤部長の自由だ。

私がとやかく言うことじゃない。

ゆうべの私のメッセージに、安藤部長からの返信はなかった。

会議室では嫉妬心と独占欲を剥き出しにしていたわりに、誰と一緒なのかとか、帰ったら連絡してなどと言わなかったと言うことは、安藤部長も私が他の誰と何をしていても、あまり気にならないのかも知れない。

あれも新婚らしさを演出するスパイスみたいなものだったんだろう。

そんなことをしてまで私を振り回して、一体何が楽しいのかわからない。

うっかり勘違いしそうになってしまったけど、おかげで少し冷静さを取り戻せた。

浮わついた気持ちは捨ててしまおう。

安藤部長とはいずれ離婚するんだから。


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