いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─

妄想ウエディング

翌朝いつも通りに出勤すると、私のデスクの真ん中に分厚い雑誌が置かれていた。

誰かが置き忘れたのかな。

なんの雑誌だろうと思いながら表紙を見ると、それはブライダル情報誌だった。

こんなものを持ってくるのは、きっと結婚を間近に控えた女子社員だろう。

それをなぜ私のデスクの上に置き忘れて去ったのか、持ち主は一体誰なのか。

持ち主が取りに来るのを待ってみようと、雑誌をデスクの端に寄せて仕事の準備を始めたけれど、しばらく待ってみても誰も取りに来ない。

持ち主を探すのは面倒だけど、置きっぱなしにするにはあまりにも邪魔過ぎる。

どうしたものかと思いながら雑誌を手に取り、何気なくパラリとめくってみると、ウエディングドレスを纏ったモデルがブーケを手に微笑んでいた。

綺麗な人はどんな服を着ても綺麗だけど、ウエディングドレスはまた格別だ。

私が着てもきっと似合わないんだろうな。

このさき着る機会があるかどうかもわからないけど。

人のものを勝手に見るのも悪いかと思い雑誌を閉じようとしたとき、背後に人の気配を感じた。

振り向かずともそれが誰なのかわかる。

この圧は安藤部長に間違いない。