いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
嵐の前の静けさ
営業部の親睦会費消失事件は、翌日には他の部署の人間にもじわじわと知れ渡り、昼休みの社員食堂ではあちらこちらで噂話をする声が聞かれた。

良くない噂と言うのは広まるのが早いものだ。

私と優花、彩名、果歩は4人で昼食を食べながら、そんな噂話に耳をそばだてている。

「やっぱり高田さんが怪しまれてるね」

「今日も無断欠勤ですからね。他にめぼしい人間がいないんですよ」

今朝、私は朝食を取りながら、ゆうべみんなで親睦会費消失について考えていたことを創さんに話した。

創さんは昨日航太のマンションに行ったけれど、部屋はすでに解約されていたそうで、実家にもしばらく帰っていないし連絡もないと両親は言っていたらしく、結局航太には会えなかったそうだ。

そして守衛室で営業部内に設置されている防犯カメラの映像も確認したけれど、週末にオフィスに出入りした人間が怪しい動きをした様子もなく、数週間前に遡ってみてもそれは同じだったと言った。

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