副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜

「篠原さん、なんでしたか？」

「今週末なんだけどね、知っての通り異業種の交流パーティーがあるんだけど……」

「はい」

珍しく言い淀む篠原さんに、訝しげな視線を向けた。

「同行する予定だった片山さんなんだけど、体調が思わしくなくて、しばらく休職することになったんだ」

「片山さん、どうかされたんですか？」

「うん。命に関わるとかそういうことではないんだけどね、しばらく安静が必要みたいだ。
それで、パーティーの同行を、佐山さんにお願いしたいんだけど……」

「パーティーの同行ですか……」

「君が社交の場が苦手なのは、十分にわかっているんだけど、代わりが務まる人物がいないんだ。君は秘書として優秀だし、記憶力も抜群にいいから、そういう場にすごくふさわしいんだ。お願いだから、力を貸して欲しい」

そう言って、頭を下げられてしまった。