副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
その後は、父親の会社に入り、下積みから始めた。
カタログ販売中心だった世の中で、うちもハガキや電話、FAXで注文を受けて衣類の販売を行っていた。
しかし、これからはインターネット中心になると、いち早く動き出し、改革を推し進めてきたおかげで、時代の流れに乗り遅れることなく生き残ってこられた。
自分が入社した頃は、ちょうど改革の大詰めの時期で、僕も現場で力を注いだ。

企画課にいた時は、各世代の人気ブランドとのコラボ商品を提案したり、自社ブランドを立ち上げたり、自分のやりたいことを推し進めていった。

こうして実績を積み、35歳の時に副社長に就任した。

この会社でやりたいことは、まだまだたくさんある。
しばらくはまだ、プライベートはそっちのけな生活が続きそうだ。


そんな仕事一色の生活の中で、再び佐山美鈴に出会ったことは、何か自分の心に引っかかるものだった。
ただ、再会と言っていいものなのかは、わからない……
一方的に、こっちが知っていただけという可能性が高い。


無邪気だった少女は、すっかり大人の女性で、目を逸らせないほど綺麗だった。


それから僕は、彼女の存在に心を乱され続けていった。
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