副社長の初めての相手は誰?
7  産まれる前の約束教えてあげる


 希歩が部屋で考え事をしている時。


 絢は優輝に電話していた。


 固定電話の子機をもって、忍の部屋でこっそり電話している絢。


「お父さん、いまどこにいるの? 」

(まだ会社だよ)


「じゃあ、帰りに来てくれる? お母さんもいるから」

(え…)


「忍はもう大丈夫みたいだよ。だから、お父さん。今度は、お母さんの傍に居てあげて欲しいの」

(…そっか…。そうだね…)


「うん。あのね、お母さんも解っているんだよ、自分の本当の気持ちは。でも、ちょっと踏み出せないみたいだよ。だから、そこはお父さんが引っ張ってあげて」

(絢。…とってもしっかりしているね。そうゆうところは、お母さんと似ているな)


「だった親子だよ、似ていて当り前でしょう? 」

(そうだね。…帰りに寄るから、待っててね)


「うん。まっているね」


 
 絢と優輝がそんな電話をしているとは知らず、希歩は部屋から出てきてそろそろ夕飯の準備をしようとキッチンへ向かった。



 
 夕食の準備を始める希歩の下に、絢がやって来た。


「お母さん、今夜は何を作るの? 」

「今夜は焼き魚にするね。ここの所、洋食が続いていたから」

「うん、私お魚大好きだよ」


 食卓の椅子に座って、絢は希歩の後姿をじっと見ていた。


「ねぇお母さん。どうして私が、忍の事知っていたかしりたい? 」

「そうね。どうしてかな? って思っていたから。知りたいかな」


 ジャガイモの皮をむきながら、希歩はあまり深く考えないで答えた。

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