夜空に君という名のスピカを探して。
三章 人生のプロデュース
 ジリリリリッという聞き慣れない単調の目覚まし音で、一気に浮上する意識。

やがて加賀見くんが覚醒したのか、眩しい光が視界を占領する。

 昨日は加賀見くんが眠るのと同時に、私の意識もなくなった。

それどころか眠気まで共有しているので、やっぱり死んだという実感はない。

あるとすれば、身体が不随意に動くという違和感だろうか。


『おはよう、加賀見くん』

「うわぁっ」


 一日の基本である朝の挨拶をすると、彼はバサバサッと掛け物ごとベッドから落下した。

ドスンッと尻餅をついたせいで、臀部から腰に掛けてじりじりと痛みが襲ってくる。


『痛いっ、その身体は今や私のものでもあるんだから気をつけてよ!』

 こういうとき、感覚を共有している不便さを痛感する。


「やっぱり、昨日のことは夢じゃなかったのか……。そうだ、ひとつ修正しておきたいんだが、この身体は俺のものだからな」


 まぁ、今のは言葉の綾だ。

感覚を共有している以上は、私だって快適に過ごしたい。

毎度驚かれて尻餅をつかれては、たまったもんじゃない。

 夢だと思いたい気持ちもわかるし、私だって彼の立場だったら卒倒する。

現実逃避をしたくなるだろうけれど、加賀見くんは極端にキャパシティーが狭すぎる。

実際に私がこうして話しかけているのだから、そろそろ受け入れてくれてもいい頃じゃないか。


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