悔しいけど好き

最後の小話

「姉ちゃんきれーだ!」

湊斗が感動しきりでパシャパシャと写真を撮りまくる。
その手にしているカメラはランクの高い新品。

湊斗は今年私もいた地元では進学校の高校に入学した。
その入学祝に私と鷹臣からプレゼントしたものだ。
可愛い弟はたいそう喜び毎日にやけながら磨いているという。(海里兄さん談)

「湊斗、写真はもういいから」

撮りまくる湊斗に恥ずかしくなって私は頬を赤らめた。

私は今教会の控室で鏡の前に立っている。
もう一度鏡をまじまじと見るとレースがふんだんにあしらわれた真っ白なプリンセスラインのウェディングドレスに身を包んだ、自分の姿が映っていた。
頭上には夢だったティアラが輝き長いベールが足元まで伸びている。
お姫さまに憧れていた子供の頃の夢がかなった。

10月の晴れ渡る空。
私は今日、鷹臣と結婚式を挙げる。

「兄ちゃん先越されちゃったねえ」

あ~あ、残念!と湊斗にからかわれた海里兄さんは腕を組みふんと鼻で笑った。

「俺は別に焦ってねえし。農家の嫁にふさわしい逞しい女を探してるんだ。凪、お前の会社でよさそうなの居ねえか?紹介してくれ」

「逞しい…」

つい、筋肉隆々な女性を思い浮かべてしまった。
焦っていないと言いながら海里兄さんは結婚相談所にまで登録して婚活してるらしい。
兄のお眼鏡に叶う逞しい女性が何人いるだろう?
妹の欲目が無くてもいい男だと思うのになかなか結婚まで漕ぎ着けられない残念な兄である。

「凪~、きゃあ!綺麗!かわいい!」

「凪さんめっちゃ綺麗!」

控室にやってきたのは親友の明莉と後輩の嶋田さん。
大はしゃぎで私を褒めちぎってくれて照れまくってしまう。

「はあ、可愛すぎ。ねえまだ神城くんその姿見てないんでしょ?」

「うん…」

鷹臣には結婚式までのお楽しみということでドレス姿は見せていない。
教会の扉が開き私の姿を見た鷹臣がどんな反応をするのか楽しみだ。

そろそろお時間ですというスタッフさんの声掛けにじゃあまた後でねとみんなが出て行く。

「凪、お前の友達可愛いじゃないか、後で紹介しろ」

「え?お兄本気?」

正に獲物を狙う野獣のように明莉を見る海里兄さんがこそっと私に耳打ちした。
にやりと笑い出て行く海里兄さんを呆然と見てしまった。
紹介はいくらでもするけども、明莉は逞しい女性ではない。
それに明莉は海里兄さんを受け入れてくれるだろうか?

明莉と海里兄さんが…まさか、いや、でも、…と悩ましく思いながら最後に出ると目の前に周くんがいた。

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