君色に染まる
学校全体が賑やかになっていく。
私一人の反対意見は彼の説得により、かき消されてしまった。


「不服そうですね、センセ」


彼はこの学校の生徒会長、市原翔太。
生徒会室で資料を見ながら、私を嘲笑うかのように口角を上げている。


私は彼に渡すための資料を抱き抱え、ドアを開けたばかりだった。


「校長も、教頭も、ほかの先生方も納得してくれた結果なんですよ?なにより、生徒たちもやる気満々です。諦めてください」


そう言われて諦められる性格をしていたら、苦労はしていない。


「そんなだから生徒に嫌われるんですよ、センセ」
「余計なお世話よ」


感情に任せて資料を机に叩きつけてしまった。
市原君は一瞬驚いたように見えたけど、私の顔を見て笑う。


「クールで堅物だなんて、嘘ですよね。教師っていう仕事に一生懸命なだけ」


私に向けられたボールペンを奪い、机に置く。


「悪い?」
「いいえ?素敵なことです。ただ、それが誰にも伝わってなくて可哀想だなーって思っただけです」


また言い返してしまいそうになり、必死に落ち着かせる。


「同情は結構よ」


これ以上市原君と話していたら、教師のプライドをズタズタにされそうで、ひとまず逃げることにした。
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