伝わらなかったあの日の想い
月が綺麗ですね
私は、寄りかかっていた賢吾から身を起こして言った。

「だって、賢吾何も言わなかったじゃない。」

「ちゃんと言っただろ。
月が綺麗ですねって。」

はぁ!?

「そうよ。
だから、私も答えたじゃない。
うん、綺麗だねって。」

「え?」

賢吾は私を見下ろして固まった。

「あれ、俺の告白を聞き流したんじゃ… 」

「は?
バカじゃないの?
I love you が『月が綺麗ですね』
だったら、『うん、綺麗だね』は、どう
考えても、me too でしょ。」

賢吾って、ほんとバカ。

「そっか、そうだったんだ。
あーあ」

ビールを床に置いた賢吾は、そのまま伸びをして、後ろに倒れて寝そべった。

「なぁ、紗優美。」

「何?」

私は、半身になって振り返る。

「さっきのは?」

「さっきの?」

聞き返しながら、私はビールを口に含む。

「さっきの『綺麗な月』はどっちの意味?」

ブッ!

私は思わず、ビールを吹き出した。

「あーあ、何やってんだよ。」

賢吾は呆れたように言いながらもティッシュを取ってくれる。
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