彼氏のいない週末は~夏の忘れ物
彼氏のいない週末は~夏の忘れ物


「いらっしゃ……ちょっと!あんた何やってんの!!」

重い樫の扉を押し開けた途端、ダウンライトとガレのスタンドが上品な大人の空間を醸し出す店内に似つかわしくない叱責の声が響く

世間一般はお盆休みとなる夏の連続休暇も、一斉に休みの取れないわが社の社員たちは、互いの予定をすり合わせてやっと消化している

当然家庭や彼氏持ちは、お相手の予定に合わせたいだろうと、ここ数年おひとり様の私は9月に入ってから、なんてこともざらだった

まあ、ハイシーズンを過ぎた方が何かとお得だったり、観光地も交通網もすいてたりとメリットも多いので、気にならない

同じような境遇の友人と出かけることもあるし、一人旅はそれはそれで出会いもあるし何より気軽なのだ

ただ遊び疲れて久々に出社すれば、周りはすでに通常モードで仕事を振ってくる
疲れた体をごまかしつつ、年々無理が効かなくなったなとボヤキながら、なんとか週末の今日をやり切った

まっすぐ帰っても良かったが、なじみのバーのママにお土産を渡したかったし、何より少し話して癒されたかったので、つい店に足を向けたのだが…

扉を開けて聞こえたドスのきいた声に、回れ右をしたくなってしまったのは仕方ないと思う





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