残念な上司に愛の恐竜料理を!
序章

プロローグ


 
 どうして、こんな事になってしまったのだろう。
 洞窟の外は土砂降りの雨が降っており、濡れるのを嫌う恐竜達は、どこか森の奥に姿を潜めてしまったようだ。小型の恐竜などが雨宿りに入ってこないように、入口近くで焚き火をしているが、乾いた燃料がいつまで保つか分からない。
 掃除をしたものの得体の知れない大小の虫が、暗い岩だらけの床を歩き回る。湿った天井には蝙蝠の代わりに蛾のようなハゴロモがびっしりと集合し……煙に燻されて驚いたのか、飛び回ってウザい。

「……大丈夫ですか? 松上さん」

「ああ、傷はそんなに深くはないようだ。すぐよくなるよ。すまないな、セラミック」

 セラミックのすぐ隣に横たわる松上晴人は、彼女を安心させるためなのか、そんな事を嘯いたようだ。しかし左肩に巻いた包帯には血が滲み、傷を負った反応なのか熱があるようで、呼吸が若干苦しげに見えた。
 荷物の大半を失ったので、僅かな医薬品しか使えないし、すぐに底を着くだろう。

「それと寒くはないですか? 幸いな事に、ずぶ濡れにならずには済みましたけど」

「君が火を起こしてくれたおかげで、何ともないさ」

 手当てのため薄着になった松上だが、そうは言いつつも、大きなくしゃみをした。洞窟の奥から何だか冷たい風が吹いてきて、焚き火の炎をちろちろ揺らしている気がする。
 セラミックは黙って地面のお尻をずらしながら寝ている松上の傍に行き、ゆっくりと上半身を抱き起こすと、ぴったりとくっ付いた。

「セラミック……」

「ごめんなさい、松上さん。いやβチームの()()()()。一緒に生き残るためですよ。無事にここから脱出して現代に帰りましょう」

「そうだな、ところで携帯無線機は本当になくしてしまったのか?」

「はい、私の分も探しましたが見付かりません」

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