完璧美女の欠けてるパーツ
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悲壮感。

次の日
梨乃は仕事をしながら悲壮感を漂わせていたつもりなのに「頭でも痛い?眉間にシワできてるよ」係長にそう言われてしまった。

悲壮感じゃなくて体調不良に見えてしまうのか。
反省をしながら考える。

「梨乃さん、webデザイナーの太田さん名刺持ってますか?」
「うん。あるよ」
「助かります……って、どうしました?」
後輩のゆっちゃんが梨乃のデスクに小走りでやってきた。ゆっちゃんの様子を見て周りも梨乃のデスクに注目し、同僚女子もやって来た。

えっ?どうしたって何?
悲壮感出てたかな?
ちょっと嬉しくてふたりの様子を見ると、彼女たちは梨乃の傍で座り込み小さくなって梨乃を見上げる。梨乃も自然になぜか椅子から降りてデスク前に小さく固まる三人。

「目が赤いです」
小声でゆっちゃんに言われてしまった。
きっと飲みすぎか寝不足か、どちらかだろう。

大志と手を繋いで駅まで走ったのが忘れられず、ベッドに入ってからもなかなか寝付かれなかった。
「泣いてた?……とか?」
心配そうなふたりの顔を見て『これだ!』と梨乃は声を上げてガッツポーズを取りたくなった。
明るくて友達の多いゆっちゃん&噂好きな同僚が目の前にいる。チャンス!
梨乃は奥歯を噛みしめる。
そして大好きな祖母が高校の時、102歳の老衰で亡くなったのを無理やり思い出して涙を浮かべた。



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