甘味好き御曹司とお見合い結婚!?
恋を自覚して
自分の気持ちを自覚して、私は初めての事にふわふわとしていたのだろう。仕事こそスイッチが入るからなんとかなるものの、私生活ではふわふわぼんやりしてしまう。
料理中もこれは好きかな? と考えたり、部屋で本を読んだりしてても今なにをしているだろうと気になる。
そんな時にメッセージが来ると嬉しくて、私はすぐに返事を返すようになった。

「お疲れ様。今日は国内で出張で今は福岡にいます。明日には東京に戻る予定なので、ボナ・ペティへ顔を出せそうです」

「お疲れ様です。お仕事相変わらず、忙しそうですね。明日、美味しいデザートを作っておきますね!」

そんな返事を送ると、嬉しそうなくまさんのはしゃいだスタンプが送られてきた。
思わず、クスリと笑みを零すと、その後立て続けに写メが送られてきた。
それは夕飯を食べたのでだろう、ホテル高層階と思われるレストランからの夜景で最初こそその景色に見とれたが、よくよく見るとそこにはカメラを向ける高峰さんの横に、和美と出かけた時に一緒に歩いているのを見かけたスラッとした綺麗な女の人が一緒なのが鏡に映っていたからだ。
胸に微かに痛みを覚えるのは、なぜなのか。
私より高峰さんの隣が似合う美女……。
美男美女は並んでいると絵になるのだ。

私は、最初こそ惹かれたその画像になんの返信も付けずにメッセージアプリを閉じた。

「きっと秘書さんだと思う。高峰さんは社長だし……」

そんなふうに言い聞かせるように呟くけれど、胸の痛みとモヤモヤはなかなか消えてくれない。

「明日、来てくれるかもしれないんだから。高峰さんの好きな物を用意してあげたい」

そう気持ちを切り替えて私は明日作る予定だったデザートを再確認しつつ、その中の材料で高峰さんだけのデザートを考えたのだった。

この胸のもやもやの原因をなんとなく分かっていても、私は思考を切り替えて見て見ぬふりをしたのだった。
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