甘味好き御曹司とお見合い結婚!?
エピローグ 潤也side

最近はすっかり減って安心していたのに、昨日唐突に母が久しぶりにお見合いの話を持ち出した時、最初はげんなりしたのは言うまでもない。

自分で起業して八年。
ようやく余裕が出来て軌道に乗り始めた会社を動かしていくのが楽しくて、仕事大好き人間の俺は結婚については正直まだまだ考えていなかった。

だが、話を聞くと俺の気持ちは一気に変わることになる。

「ねぇ、潤也。会うだけでいいから、私の華道の師範のお孫さんに会ってみてくれないかしら? とってもいいお嬢さんなのよ。ご自宅の近くのイタリアンのお店でパティシエをなさってるんですって」

イタリアンで、パティシエ。
その二つの言葉には反応してしまう。
俺が現在唯一気になっているのは、週一で通っているイタリアンでパティシエとして働いている女の子だ。

去年の誕生日に兄に連れていかれた、商店街と住宅街の境目にある隠れ家的な感じの家庭的なレストランは、味も美味しく雰囲気も良く、なにより俺が好きなデザートがとても美味しかったのが魅力的で、すっかり気に入って通うようになった。

そこで、半年ほど通ってデザートを作っているのは俺より少し年下の女の子だと気づいた。

その日は彼女の友人が来ていたらしく、厨房からデザートの盛り合わせを持ってお客である友人にサーブしていたのだ。

そのデザート盛りが羨ましかったのもあるが 、持ってきた彼女に自然と目線が行く。
そして、席が近かったのもあり二人の会話が自然と耳に入ってきた。

「あー、本当はもっと多く来たいのになかなか来れない。夏乃のデザートが一番美味しいんだよー!」

そう、キリッとした目の美人なタイプの女の子が言うと、キッチンから来た夏乃と呼ばれた控えめなタイプの女の子はニコニコと笑って答えている。

「私のデザートをそこまで気に入ってくれるのは和美くらいよ。今月も忙しかったのね、お疲れ様。ほら、和美の好きなやつよ」

差し出されたお皿に和美と呼ばれた方は顔を輝かせて、フォークを握りしめていた。

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