甘味好き御曹司とお見合い結婚!?
お祖母ちゃんの危機

 私の祖母、佐藤そのえは御年八十歳と高齢になるが、普段から元気でパワフル、華道の師範として今もお教室を週三日開き、生徒さんに教えている闊達な人だ。
 そんな祖母が、自身の体調がおかしいと自ら110番通報をして救急隊が駆け付けた時は呼吸も困難な状態にあり、危なかったらしい。
 早めの自身の通報によって、救急搬送されたおかげで一命をとりとめたというのが病院に駆けつけた時に医師から言われた言葉だった。

 「お祖母ちゃん……。お願いだから、まだ私を置いていかないでね。まだなにも返していないんだから……」

 処置をしてもらった祖母は、昨日まで元気だったのがウソみたいに今は管につながれている。
 苦しさの原因は、早く気づいたから助かったものの軽い心筋梗塞だったというのだ。
 今は薬で落ち着いたが手術が必要だという。年齢の割に元気な祖母だが、やはり手術の身体的負担は大きいと医師から言われた。
 それでも、手術で元気に生活できるなら受けてほしいというのは私のわがままだろうか?
 そんな風に、祖母が目を覚ますまでぐるぐると手を握りながら考えていた。

 運び込まれた翌日の早朝、祖母は無事に目を覚ました。

 「あら、夏乃お仕事だったでしょうに。ごめんなさいね」

 手を握り返して、開口一番で私を気遣う言葉に首を横に振って返事をする。

 「なに言ってるの! お祖母ちゃんは、私のたった一人の家族なのよ? ちゃんと連絡くれた病院には感謝しているし、万一の連絡先きちんとしておいて良かったって思ったもの」

 そう、私たちは一緒に暮らしているけれど祖母も週三日で働いているし、私も休みは週二日あるとはいえ、定休日以外は不定休なところがある。

 なので、なにかあった時のために祖母の保険証などのケースには緊急連絡先に私の携帯と職場をしっかり明記していたのだ。
 備えていたことが役に立ったということだが、今まで元気だったからこうなってやっと実感したのだ。
 祖母は私より絶対に先にいなくなるんだってことを……。

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