人を愛することは、これほどまでも辛く悲しいことだとは思いもしなかった。


小説家になりたいと願う亜崎達哉。そんな彼の前に現れたのは、同じ大学に通う今村沙織と言う読書好きで、見た目あどけなさを感じさせるさらさらとした黒髪が印象的な綺麗な人だった。

彼女は僕の書いた小説の一番目のファンになってくれた。僕等二人は、あることをきっかけに急接近し恋人同士と言う関係になった。
だが沙織には、僕の知らないある秘密があった。

自分の大切な、自分が一番に大切だと思う記憶を失ってしまうかもしれないと言う、脳の障害を持っていた。
それは何時発症するのか分からない。手術をしても成功の確率は低い。まして手術をしなければ彼女の命は……

失いたくはない!
自分の家族、そしていつも傍にいてくれる親友の事を。

沙織は思った。この人を愛すれば、私の大切な人たちの記憶は私からは消えないのではと。

しかしそれは大きな誤算となった。
彼女の記憶が無くなれば僕らは……。
彼女はいつしか本気で僕のことを愛してくれていた。その想いを本気で愛した僕の記憶を沙織失いたくないと願い、その想いを必死に守ろうとする。

だが、運命は僕らを引き裂いた。
それは沙織が本当に僕のことを愛し、一番大切な人だということを認めさせてくれることでもあった。

彼女と出会い、大切なものが奪い去られるまで、共に過ごした180日間の想いを、僕は一生君に捧ぐ。


最後に残した沙織の言葉。
「もし私があなたを見失う事があっても、必ずまたあなたのもとに導いて」と。
その言葉を僕は忘れる事はなかった。

いつの日かまた僕の前に、あの笑顔を戻してくれることを願い、僕は小説のなかでずっと彼女にメッセージを送り続けてた。例えそれが彼女に届かなくとも。
たとえそれがどんなに無駄な事であると言う事を分かっていても。

1%の可能性もないということを知りながら僕は君に届け続けた。
もし、運命という悪戯が・・・
もし、また君を愛することが許されるのなら。
僕は、僕のすべてを君に捧げるだろう。
その願いを信じ僕は物語を描き続ける。
もう一度、僕の前であの笑顔を投げかけてくれることを願いながら……。

あらすじ

また君を愛せるのなら、僕はきみに捧げよう。僕のすべてを

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