いつも、ずっと。
エピローグ
「お父さん、今日は飲み過ぎじゃなかと?もうそろそろ……」



「あ?今日の酒はなんか知らんけど特別美味(うま)か気のすっばい。ほら友也!お前もまだいけるやろ」



「おじちゃん強かって。もう俺無理ばい……」









明日美と二人で生田家に来て、待ち構えていたおじちゃんとおばちゃんに結婚の許しを乞うた。



『とうとう来たか』



待ち構えていたのは今に始まったことじゃなかったらしい。

あれは確か十一年前のことだ。

明日美と付き合うフリをすることになった時に、明日美に内緒で生田家で会合を開いた。

明日美が両親に"フリ"だと言うことを拒否したから、俺からカミングアウトしたのだった。

その時に、俺が明日美と将来結婚したいと思っていることも打ち明けた。

プロポーズはまだ先になるけど、せめて結婚を認めて欲しくて……。



『先の事はお互いの気持ち次第やろ。また改めて許しばもらいに来い。よかか?』



明日美を置いてきぼりにして、俺の独りよがりでは許してもらえるはずがなかった。

お互いに好きだという気持ちを確かめ合い、結婚の意思も固まった今、障害は何もない。

やっとここまで来た。



もう俺の気持ちは分かってるはずだから、ごちゃごちゃ言わずにシンプルに伝えた。

おじちゃんとおばちゃんも心の準備はできていたらしく、動揺したり取り乱したりすることもなかった。



ほどよい緊張感に包まれながらも、ほんの短い時間で俺と明日美が一緒になることを認められ、俺は明日美の婚約者となることを許されたのだ。







「御子柴さん夫婦が福岡に帰っとらんかったら一緒にこの喜びば分かち合うとやったとに残念!いつ帰ってくっと?」



父ちゃんと母ちゃんが帰るのは明日の夕方の予定。



「帰るとは明日けど。俺からあの二人には報告するけん、おばちゃんたちには多分うちの母ちゃんから何か言うてくるやろう。うちの親も明日美ば気に入っとるけん、大喜びばいきっと」



それはまあいいとして、今日はあの二人は帰ってこないんだ。

つまり今夜は俺一人なわけで。



『やっと友也もアレば卒業……』



母ちゃんの台詞が俺の頭をぐるぐると駆け巡る。

俺と明日美は結婚の約束をしてるんだし、もういいんじゃないか?

しかし俺は結婚初夜までは明日美の純潔を守ると決めたんだ。

俺の脳内で貞操問答が繰り広げられている。


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