わかばの恋 〜First of May〜

だれにも相談できなかった母だが、そのときたまたま開かれた中学の同窓会に出席して、同級生の一人にそのことを打ち明けた。


その人は大手自動車メーカーの創業者一族の家に生まれ、当時すでに社長に就任していた。
家の方針で中学までは公立校に通わされていたから、一般庶民の母と同窓なのだ。

社長はすぐにあたしたちをお屋敷に連れ帰り、奥様に事情を説明してくれた。

スウェーデン人の父を持つという美しい奥様は、涙ぐみながら『辛かったでしょうに…』とあたしを優しくハグしてくれて、ふんわりといい匂いがしたのをなんとなく覚えている。


母は社長のお屋敷で家政婦として住み込みで働くことになった。

さらに、母に弁護士までつけてくれて、あっという間に離婚が成立した。

長じた兄が弁護士の資格を取得したのは、これがきっかけだったように思う。

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