身代わり婚~偽装お見合いなのに御曹司に盲愛されています~
序章

クリスマスソングが街中で聞こえる12月。

ピンと澄んだ空気と、暖かな日差し、そして珍しい風花が舞う日だった。
職場へと向かう途中、私はその光景に空を見上げた。

「きれいですね」

不意にかけられたその言葉に、私はゆっくりと振り返った。
上品なスーツに身を纏った優し気な雰囲気の男性。
逆光ではっきりと顔は見えなかったが、とても身長が高いのを覚えている。

「本当ですね。風に舞った雪が花びら見たい……」
そんな珍しく風情のあることをいった自分が面白くなって、くすりと笑った。

「どうしました?」

「いえ、自分でも何を言ってるのだろうと……」
そう言って私は、冷たい空気に首元をキュッと抑えながら、もう一度空を見上げた。

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