身代わり婚~偽装お見合いなのに御曹司に盲愛されています~
第八章 再び咲く花 二度と離れない

「礼華、起きられる?」

お母さんの声にも、私は答えることが出来ずトイレへと駆け込んだ。

退院してから1カ月、私はお母さんの実家である海沿いの街にいた。
つわりも酷く、会社には入院からの体調不良というこにして休職をしている。

退職するにもきちんと引き継ぎの為、一度会社に行かなければいけない。
それに、お父さんからも何度も悠人さんが、家に来ていることを聞いている。

このままでいい訳がないのはわかっていた。

食べることもままならないので、吐くものもないがとりあえずこみ上げる吐き気に耐えていると、ポロポロと涙が零れ落ちる。

あー、情緒不安定だ。
妊娠するとホルモンバランスが悪くなると聞いていたが、本当にその通りだ。
お腹のベビちゃんと生きていく、そう決めたのに悠人さんがいないことが寂しくて、恋しくて、会いたくて。

ひとしきり泣いた後、なんとか涙を止める。
< 169 / 183 >

この作品をシェア

pagetop