身代わり婚~偽装お見合いなのに御曹司に盲愛されています~
第三章 遷ろう心 優しくしないでください

そして翌週の土曜日、少しの荷物を持って、私は大村さんのマンションへと引っ越した。
基本的な物は、私が使っているものより良いものが揃っていたこともあり、そんなに荷物もなかった。

「お帰りなさい」
パタパタと長い廊下を走ってお出迎えすると、甘い笑顔と頬へのキスが降って来る。
「ただいま」
同居し始めたときに提案された疑似結婚生活。

『結婚しているつもりで生活をしよう。それでないとわからない』
その提案を了承してしまったことが、よかったのか悪かったのかわからないが、結婚とはこんなにも甘いものかと思うほど、甘々の生活をしている。

そして、一番の問題はそれが私にとって嫌じゃないこと。

「今日のご飯は?」
スーツの上着を脱ぎながら大村さん改め、悠人さんは私を見つめる。
「今日はリクエスト通り生姜焼きにしました。よかったですか?」
「ああ、ありがとう。着替えてくる」
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