愛され秘書の結婚事情
第一章「早朝のプロポーズ」

1.


 役員秘書の朝は早い。

 三月十日。第二金曜日。

 時計のアラーム音がピピピ……と小さな電子音を奏でた瞬間、七緒はスイッチに手を伸ばしていた。

 佐々田七緒(ささだなお)、29歳。

 地元の四年制大学を優秀な成績で卒業し、上京。

 当時、飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長を遂げていた外食産業の旗手、株式会社サブマリンに入社。

 入社当時から秘書室勤務で、補佐から専任秘書になれたのが五年前。以来ずっと、秘書業務一筋でやって来た。

 今の仕事は自分に合っていると思っているし、やりがいも感じている。
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