愛され秘書の結婚事情

2.


 午前九時一〇分。

 悠臣が出社したとの受付からの報告を受け、七緒はいつものスタイルでエレベーターの前に待機していた。

 ゆっくり上昇して来た鉄の箱の扉が開き、悠臣がいつもののんびりした笑顔で、七緒に「おはよう」と挨拶した。

 明るい色を好む悠臣は、季節を意識しているのか、萌黄色のネクタイとチーフを淡いベージュ色のスーツに合わせている。

 一見、日本人には似合わない組み合わせだが、彫りが深い顔立ちでスタイルの良い彼には、嫌味なほど似合っていた。

「おはようございます」

 七緒もにこやかに挨拶を返した。
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