社長の溺愛にとかされて
抜け出せない過去
夏の日差しが容赦なく照り付ける。
今日も暑いなと、速足で会社のあるビルへ向かう。

会社の入り口の近くまできて、少し上を向いて思う。

(いつ見てもオンボロだなぁ)

年代物のビルは壁は変色し、一部ヒビを補修した後が残っている。
近代的なビルが並ぶ中、時代に取り残されたよう。

そんなビルのエレベーターも年代物で、
あるだけましと言ったモノ。

乗るとウイーンと大きな音が響き、途中でガタンと揺れる事もある、
いつ止まるかと言う恐怖に悩まされつつも、
オフィスがある5階まで階段を使う気にはならず、
今日も祈る気持ちでエレベーターに乗る。

(神様、仏様、よろしくお願いします)

祈りが通じたのか、無事オフィスの前に到着すると、
おんぼろビルには似つかわしくない、指紋認証システム。

手をかざし、ロックを解除する。

ドアを開けオフィスに入ると、中はリノベーションされ、
近代的なオフィスが現れた。

(西洋のお城に入ったら、畳があったぐらいのギャップは十分あるよね)

ライトのスイッチを入れると、整然と並んだスチール机が、
目に飛び込んでくる。

ほとんどの机には、パソコンのモニターが2つ、ないし3つ
設置されており、パソコンで占領されている。

そうなると、関連の資料や本は床に積み上げられる事になり、
おそらく本人以外、何がどこにあるか全く分からない。
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