契約結婚の陰に隠された真実の愛〜言葉に出来ない気持ち〜
第十章 忍び寄る影
しかし幸せは私達に背を向けた。
私の元彼が、二人の間を引き裂こうと、近づいていた。
私のあとをつけて機会を伺っていた。
そんなことが起こっていることなど知る由もなかった。

「亜実」

「渉?」

「また、会ったな、俺達縁があるのかな」

彼が私の後をつけてきたことに気づかなかった。

「渉、柊さんの会社に行ったんですって?なんで私を返してもらうなんて言ったの?」

「また、亜実とやり直したいんだ」

「渉、私、人妻よ」

「契約結婚だろ、それに愛されていないんだろ」

「残念でした、この間ちゃんとプロポーズされたよ、愛しているって言われたし・・・」

「そうなんだ、でもあいつ、二十七だろ?十年経つと俺と同じ年ってことだろ?二十代の相手がいいに決まってるさ」

「じゃあ、渉も二十代のお嬢さん誘ったら?」

「なんだよ、やきもちか」

「誰が誰にやきもち焼くの?」

「なんか十年経ってるとは思えないな、あの時と何も変わらない、亜実も俺といた方が気が楽だろ?」

ちょっと図星かもと思った、柊さんといると緊張する、でもそれは大好きだから嫌われたくないから、変なこと言わないようにしようと思う。

渉とは・・・友達みたいな感じ?変なこと言っても嫌われてもいいかなって思う。

やっぱりずっと一緒にいたいのは柊さん。

「私、帰るね、渉とは会うなって柊さんに言われたから・・・」

「わかった、じゃあまたな」

この時、渉とは何もなく別れたはずだった。
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