ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
∫8:言えない気持ち


【∫8:言えない気持ち】



すっかり日が沈んだ浜名湖からの帰り道。
あたしはまた入江先生の車の助手席に乗っていた。

ウエディングドレスの店では
ドキドキさせられたなぁ
シフォンケーキを食べたカフェでは、
ケーキよりも甘い入江先生を見ちゃったし
おまけに浜名湖では
他人に気を許す・・教師という鎧を脱いでいる入江先生を知った

今日の午後だけで
いろいろな入江先生を知ったなぁ


中でも、蒼井のことに触れた時の入江先生は
こっちが引いてしまうぐらい切ない顔をしてた
多分、本人は気がついていないみたいだけど



疲れてないと言えば嘘になるけれど
入江先生と過ごしたサプライズ満載な時間は
あたしにとって貴重な時間だった

でもそんな時間も
もうすぐ終わり

でも、なんでだろう?
終わって欲しくないって思っているのは
あたしだけ・・・なのかな?


「送るよ。」

『・・・・』


大学時代とかも
付き合っていた彼氏はいた

その彼氏と今の入江先生と同じ言葉をかけられたこともあった

その時は決まったように
“帰りたくない・・な・・”
と素直に自分の気持ちを伝えていたっけ

でも入江先生は彼氏でも何でもない
だからそんな気持ちなんか
伝えるわけにはいかない



「高島、ウチ、どの辺りだっけ?」

『赤電の曳馬駅のすぐ傍です。なので、浜松駅で降ろしてもらえば大丈夫です。赤電ですぐですから。』

「でも俺、半田山だから。曳馬なら通り道だからウチまで送るよ。」


どうやって帰るかまで段取りしてもらっていると
帰りたくないなんてもっと伝えるわけにはいかなくなっちゃった・・・


『じゃあ、お言葉に甘えて。お願いします。』

「了解。」

浜名湖を出てから、どんどん近付いてくる見慣れた街の明かりに
この貴重な時間が終わりも近付いていることを知らされる

名残惜しい気持ち
そんな気持ちを抱くこんな時間なんて
あたしは知らない


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