続・政略結婚は純愛のように
酒造
「弁天酒造は大きくはないですが丁寧な製法で時間をかけるだけあってとてもおいしいお酒が多いのです。やっぱり素になるお米の良し悪しは出来上がりに大きく影響するんでしょうね。こちらには美味しいお酒を作る酒造が沢山ありますから。…東京にいた頃から私ここのお酒は大好きで、時々取り寄せていたんですけどそもそも製造数が少ないのであまり手に入りませんでした。北部支社に来ることに決まったときから密かに見学に来たいって思っていたから、今日は本当に嬉しいです!」

 暖かい日差しの中、少し坂になった道を由梨は隆之と並んで歩く。
 宿を出てすぐに手を繋がれてとても気恥ずかしい気持ちになった。
 考えてみれば隆之以外の男性と付き合ったことがない由梨は、男性と手を繋いで歩くということ自体が初めてかもしれない。
 何せ二人は交際0日で結婚したし、結婚してからも地元では目立つ存在の隆之と手を繋いで出かけるということは考えもしなかった行為だ。
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