花はいつなんどきも美しく
渡さない
今度こそはと意気込んで準備をし、待ち合わせ場所に向かう。


らしくないとは思ったが、恋愛映画を見に行くことになった。


好きな人と、恋愛映画。
漫画のような展開を経験する日が来るとは。


じゃっかん浮かれながら、ショッピングモールに到着した。


悠之介はもう着いている。
私服姿はかっこよくて、何人かの女性の視線を集めている。


普段はオネエ口調だって知ったら、これほど注目はされないんだろうな。


そんなことを思いながら、悠之介に近付く。


「聡美ちゃん」


私が声をかけるより先に見つかってしまった。


「……おはよ」


待った?とかいうやり取りをしてもよかったけど、結果の見えている会話をしても仕方ない。
というか、無駄。


「おはよう」


悠之介は私をじっと見た。


「……何?」
「ううん、ちゃんと可愛いなと思って」


照れ隠しで悠之介の肩を殴る。


……こういうところは、可愛くないと思う。
自覚してても、なかなか直らない。
直したいとは思ってるんだけど、思ってるだけ。


「照れてる。可愛い」
「……そう」


こんなに可愛いと言われたことがなくて、もうどう反応していいのかわからなくなってきた。
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