黒と白の境界線〜心理学者の華麗な事件簿〜
二章 小説家と第二の事件
赤坂巴の事件から数日。捜査は難航しているようで、何度も末良刑事は京のもとを訪ねてくる。

しかし、京の仕事は犯人像を推測することだけだ。事件の捜査に加わることはできない。京は自分の仕事をこなす日々を過ごしていた。

その日は、診療所での診察ではなく診療所に行けない人のところへ行くサービスの日だ。京と遼河はとある一軒家へと向かう。

「大きな豪邸ね……」

京と遼河の目の前には、道行く人が羨むであろう白い壁の豪邸が建っていた。京が呼び鈴を押すと、家の主人はすぐに顔を出す。

「初めまして。駿河雅彦(するがまさひこ)です。ミステリー作家をしています」

疲れ切ったような笑顔を男性は見せた。顔は青白く、体は痩せていて不健康であると誰もがわかる。しかし、京は微笑んで言った。

「芥川京と申します。駿河さんの小説、読ませていただいています。複雑なトリックにいつもわくわくします」

「ありがとうございます。立ち話も何ですから……」
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