黒と白の境界線〜心理学者の華麗な事件簿〜
「罪は裁かれるべきです。あなたがそんな顔をする必要はない」

末良刑事は「ご協力、ありがとうございます」と頭を下げて冬人を連行していく。

二人の姿が見えなくなると、京の耳に今まで聞こえていなかった音が戻ってくる。止まっていた時が動き出したかのように……。

「……ッ」

京の目から涙がこぼれていく。胸が痛み、悲しみは止めどなく形となって現れる。

シャーロック・ホームズのトリックを使った事件は、悲しい結末を迎えた。否、殺人事件に幸福な結末など存在しない。

それを思い知らされた、苦しい夜だった。






< 30 / 31 >

この作品をシェア

pagetop