消えかけの灯火 ー 5日間の運命 ー
宣告



学校が終わり放課後。
俺はいつものように帰り道の途中にある本屋で立ち読みをしていた。
空が暗くなって街頭に灯りが付き始めるまで、本屋で時間を潰す。
それが俺の日課だ。
特に本が好きなわけでもない。
一人暮らしの俺には家に帰ったところでやることもなく、ただただ暇なのだ。
家は静かすぎて落ち着かない。
少しくらいの雑音がある方が、俺には合っている。
本屋の壁に取り付けられてある掛け時計を見ると、いつの間にかもう夜の8時だった。

……そろそろ帰るか。

俺は手に持っていた本を棚に戻し、出入り口の自動扉から出ていく。
もう夜だというのに、外に出るとまだじんわりと汗が滲み出るくらい暑い。

6月ももう終わりだもんな。

ざわざわとした賑やかないつも通る街並みを、ダラダラとけだるげに歩く。
前にはイチャついたカップル、そのカップルの前には仕事で疲れきったサラリーマン。
こちらに歩いてくる人はごついガタイでサングラスをかけた見た目のイカつい怖そうな人。
俺はそのイカつくて怖そうな人に肩がぶつからないよう、さり気なくするりと身体を避けた。
この時間帯、飲食店も多いこの通りは昼も夜も賑わっている。

あ〜、晩飯どーすっかな〜。
別に腹減ってねぇけど、食っとかなきゃ体力的に良くねぇよな〜。

そんなことをぼーっと考えながら歩いていると、「ちょっと」と、誰かから声をかけられた。

「?」

ピタッと足を止め、聞こえたような気がしたかすれ気味の声の主をキョロキョロと見渡して探す。

確か右の方から聞こえたような……。

だが、周りを見渡しても特に誰かに声をかけられた様子はない。

……勘違い、か。

と、気にせず止めた足を進めようとすると、またさっきと同じ声が同じ方向から聞こえた。

「ちょっとちょっと、お前さんじゃ。」

パッと右に視線をやると、さっきまでは見かけなかった黒いワンピース型の服を着て、黒い帽子を被った、長い白髪の婆さんが居た。
その婆さんは、この辺の路上には似合わない古く小さな机を自分の前に置いている。
机には黒いテーブルクロスが敷かれており、その真ん中には、斜めにヒビの入った大きな水晶玉が紫色の小さな座布団のような物の上に置かれてあった。
そして、何やら怪しげな雰囲気を醸し出しながら、婆さんはこちらを向いて座っていた。
見た目はまるで……陰湿かつ悪質そうな魔女。

「……おれ?」

俺は自分の顔に指差し、距離を取りつつ恐る恐る婆さんにそう尋ねてみる。

「うむ。お前さん、何やら不穏な空気が見える。」

こくんと頷く怪しい婆さん。

いや、こんな路上の端っこで占い?やってるあんたの方が、俺には不穏な空気に見えるよ……。
っていうか、いつもこんな所にこんな婆さんいたっけ?
こんな怪しくて独特なオーラ醸し出してる人居たら、もっと前に気づいてるはずなんだけど……。

俺は不気味なオーラを感じ、無視してその場を立ち去ろうとした、その時だった。


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