三日間の幸福
外に出て駅に向かう。
町は混乱の中にも少しずつ日常を目指して動いている様子が見える。

駅もそうだ。
昨日一日動かなかった電車が、今日から休日ダイヤで動いている。
駅員が災害を感じさせないように働いている。

平良のように帰れなかった人々が、今日からそれぞれの場所に向かうようだ。

場所によっては水がまだのところもたくさんある。
ウォータータンクに水を入れて運ぶ人ともすれ違った。

こんな時に電車でおでかけだなんて、気楽過ぎるとも思う。

でも町の中にいてもやることもない。
買い物もできない。

平良と私は、被害の小さかった県南の地域を目指して電車に乗った。
少しだけ遠い、日帰り旅行だ。

電車の中は暖かい。
ガタンゴトンと揺られながら、慣れない電車に乗ってる。
ボックス席に向かい合って二人。

キオスクで買ったお茶が私の手を温めてくれる。
なんだか、地震があったのが嘘みたいな電車の中。

「平良、今は彼女いないの?」

ふと思わず聞いてみた。

「いたらさすがにこうして他の女と寝泊まりしないでしょ。」

平良が笑う。
答えはもちろん分かってはいた。

「そっか。」
「誰と付き合っても長続きしなくて。結婚匂わせられると、つい逃げちゃう。」

平良が窓の外を見ながら言う。
平良の口からそんな言葉が出るとは意外だった。

「平良って結婚したいんだと思ってた。」

私は思ったまま口に出す。
少し平良は考えたように黙る。
そして小さく呟いた。

「さすがに相手によるよ。」

平良の言葉に胸がズキッとした。

「そうだよね。」

私もそう言って窓の外に目を向けた。

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