三日間の幸福
大阪は暑い。

夏に来た時にその暑さに驚いた。

「もし万が一甲子園に行けてたとしてさ、こんな暑さだよ?勝てるわけないだろって、試合前からバテるよな。」

平良は「暑い」と言う度に続けて言う。
何度この文句を聞いただろう。

「高校ん時はまさか関西がこんなに暑いとは思わなかったし、強ければ勝てると思ってたけど、違うな。」
「それ毎日言ってるよね。」

私は急いでアイスカフェオレを流し込む。
平良はかなりゆっくりしてる。

私より勤務開始時間が30分遅いうえに、自転車ですぐそこの距離だ。
いつも私とは真逆のスローペースな朝を過ごしている。

寝室の全身鏡の前でストッキングを履いてる時だった。
ドアの向こうで突然「あ!」と平良の声がした。

「なにー?どうしたの?」
「俺、今日ノー残業デーだしさ、」

ドア越しの平良の声。

「うん。」

ストッキングを履き終えた。
よし、今日は一本早い電車に乗れそう。

私は勢いよく寝室のドアを開けた。
パッとそこに立つ平良と目が合う。

平良がニカッと子どもっぽい笑顔を私に向ける。
この笑顔はずっと変わらない。
私をいつも幸せにする表情だ。

「仕事終わったらデートしよ。」
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