雪降る夜は君に会いたい

条件と感謝

 ───朝、雪実の第一声で目が覚めると状況を把握するのに少しだけ時間を要した。
 イケメンリア充だったら、前夜にどこかでひっかけた見知らぬ女性と朝を迎えても特に気にすることはないのかもしれないが、ヲタクの俺にとってそれは大事件であったが事実が整理されると落胆が激しかった。

「お前、ソファで寝てたんじゃないのか!」
「レディをソファで寝かすなんて紳士じゃないし、お兄ちゃんの布団の方が暖かそうだったし、いいじゃん」
「俺に襲われたらどうするつもりなんだよ!」
「お兄ちゃんは手を出してこないの知ってるから、大丈夫」

 大きめな俺のトレーナーから少し肩を見せながら着た雪実は無防備な姿で何の緊張感も無く言った。これがあやかしでなければ喜んで一緒の布団で寝ていたというのに。

「お互いの損得が一致したから泊めてるだけであって、あやかしと慣れあうつもりは一切無いんだからよぉく覚えておけよ」
「んーもぉお兄ちゃんの、いじわる!」

 萌える。俺は完全に萌えていた。この妹キャラに俺は燃え尽きる程萌えていたのだが、絶対に調子に乗るのがわかっているから雪実本人にこの気持ちを悟られるわけにいかなかった。
 今迄もこれからも、あやかしを退治する役目の家系に生まれた俺があやかしと同棲をしてしかも萌えているなどと先祖に顔向けできなくなる事態だ。
 それもあって雪実とは一線を引いている。だが、萌えながらも危ない同棲を了承したのは俺にもメリットがあったからだ。
 根っからのヲタクの俺を、あやかしであっても一応女である雪実がイメチェンを指導してくれるというのだ。その目的とは……。

「本当に天野さんと付き合えるようになれるのか?」
「任せなさいって。根拠はないけど昨夜の天野さんお兄ちゃんに助けてもらって今は気持ちがお兄ちゃんにキュンキュンしてる筈よ絶対きっと、多分」
「所々自信ない言葉が聞こえてきて心配なるが」
「それまで、よろしくね!」

 交換条件として、この部屋に雪実を泊めることであった。
 こんな萌えるキャラと一つ屋根の下で一緒に暮らしていたら危ない。気持ちが揺らがないように常に天野さんを想う時間は自然と増えて行った。

    ※
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